フルートケースを持って、歩き始めようとしたその時、流瑠がボソッと呟いた。







「桜は可愛いよ」







思わず流瑠を振り向く。



届いた言葉に、自分の耳を疑った。






「え?」






ものすごい勢いで、頬に熱が集まってくる。




だってだって…






「…聞こえたよな?」






そんなことを





「う、ううん。ううん。聞こえなかった!もう一回…」


「なっ!?聞こえたんだろ?」





そんな真っ赤な顔で、言うんだもん…。





「本当に聞こえなかった」


「……」


「だから、もう一度言って欲しいな」


「い、いや…だから…」


「う、うん。うん」


「……」



初めて、初めて、言ってくれた。