幼なじみじゃイヤなんだ。

その人影は、あっという間に彼女の背後に追いついた。



そして、その存在に気付いていない彼女が、水道の蛇口に手を掛けた瞬間。


彼女からフルートをスッと取り上げた。





「なにする……えっ!?」





言いかけて、その人影を見上げた彼女が固まる。

そして、次の瞬間、頬を赤く染めた。





「水なんてかけたら、これ使えなくなる。返してやってくれる?」





その光景を見て、私はヘナヘナとその場に座り込んだ。




放心状態のまま、フルートを持つその人を見つめる。







流瑠







「お、お、お、大石くん!?あ、あ、あたし知らなくて…ほ、本当にそんなこと知らなくて…意地悪しようとしたとかそんなんじゃなくてね」


「……」


「そうだよ…相澤さんも早く言ってくれればいいのに!じゃ、じゃあ、あたし達、行くねっ!!」





彼女は上擦った声で、たどたどしくそう言い、この場からものすごいスピードで立ち去って行った。



私の周りにいた他の子達も彼女を追いかけるように急ぎ足で去って行く。