マサくんが帰った後、すぐに流瑠が戻って来た。





うす暗くなり始めた帰り道、2人でたわいもない話しをした。



マサくんに言われた『聞けばいいんだよ』の言葉が頭をよぎるけれど、

何をどう聞けばいいのか分からず、ただ普通の話しをする。





電車から降りて改札を出た時には辺りはもう暗くなっていた。






あと10分で家に着く…。

なのに聞けない。





ふと、右側にいる流瑠の左手と私の右手が触れた。






“さわらないで”






私の中には、またあの感情がよみがえってきて、気が付けば流瑠の左手の指先を握り締めていた。





「…え?」





流瑠のその驚いた声で我に返り、パッと手を離す。





「ご、ごめん。じゅっ、充電したくなった?私……」





出て来た言葉がなぜか疑問形。


動揺が隠せない。





私達は2人の時、手を繋いで、頭をくっつけて、充電なんてするけれど、それは、小学校からの習慣で、2人にとっては当たり前の日常。




でも、街中で、人前で、手を繋いで歩くなんてしたことがない。





2人の中でなんとなくある…ルール。


それは、“彼氏・彼女”がすることで。





私の横顔を見る流瑠の視線を感じる。


でも、どうしてもその顔を見上げることが出来なかった。




流瑠が私の横顔からふっと視線を外した。






「…いいよ」





そう言って、流瑠の手が私の右手をギュッと握った。