今、雪見さんは『流瑠くん』って言った。
前は、『大石くん』だったのに。
みのりちゃんが言った事を思い出し、また落ち着かなくなる。
流瑠との会話を終えた雪見さんが、立ち去る時に、私に気が付いた。
こっちに笑顔で駆け寄って来る。
「相澤さん。バイバイ」
そう言って小さく手を振った彼女の笑顔は、夕陽をうけてとても綺麗だった。
少し妬けてしまう程、綺麗な笑顔だった。
「う、うん。バイバイ」
私はきちんと笑えていた?
彼女が立ち去るとそのやり取りを見ていた流瑠がこっちへ歩いて来た。
「桜、早かったな。今来たの?」
「う、うん。ちょうど今来た所」
ほんの少し嘘をついた。
「ごめん。ちょっとここで待ってて。先輩たちに伝えないといけない事あるから」
そう言い残し、笑顔で走り去る流瑠の左手を見つめる。
触らないで──
心がそう呟いた。
自分の心の中がもやもやと曇っていくのを感じる。
生まれて初めて持つこの感情。
上坂くんはあんなコト言ってくれたけど。
こんなものを持っている私が『綺麗』な訳がない。
『綺麗』な音色を出せる訳がない。
でも、この感情をどうやって消せばいいのかが分からないよ。
前は、『大石くん』だったのに。
みのりちゃんが言った事を思い出し、また落ち着かなくなる。
流瑠との会話を終えた雪見さんが、立ち去る時に、私に気が付いた。
こっちに笑顔で駆け寄って来る。
「相澤さん。バイバイ」
そう言って小さく手を振った彼女の笑顔は、夕陽をうけてとても綺麗だった。
少し妬けてしまう程、綺麗な笑顔だった。
「う、うん。バイバイ」
私はきちんと笑えていた?
彼女が立ち去るとそのやり取りを見ていた流瑠がこっちへ歩いて来た。
「桜、早かったな。今来たの?」
「う、うん。ちょうど今来た所」
ほんの少し嘘をついた。
「ごめん。ちょっとここで待ってて。先輩たちに伝えないといけない事あるから」
そう言い残し、笑顔で走り去る流瑠の左手を見つめる。
触らないで──
心がそう呟いた。
自分の心の中がもやもやと曇っていくのを感じる。
生まれて初めて持つこの感情。
上坂くんはあんなコト言ってくれたけど。
こんなものを持っている私が『綺麗』な訳がない。
『綺麗』な音色を出せる訳がない。
でも、この感情をどうやって消せばいいのかが分からないよ。

