幼なじみじゃイヤなんだ。

2人は何か話しをしていた。


ここからは、何を話しているのかは聞こえない。





『大石くんと雪見さんって付き合ってるの?』





みのりちゃんの言葉が頭をよぎった。




違う、きっと違う。


もし、付き合ったのなら、流瑠は私に話してくれるはず。




雪見さんはマネージャーだもん。

きっと部活のことで話しているんだ…よね。



私だって、部活中、男子部員と話しをする。





うん、同じ………だよ。





私はそこから一歩も動けないまま、目の前にある光景に、なぜか、どうでもいい理由を付けようとしていた。




彼女の楽しそうな笑顔を見ると、心が動揺する。


流瑠の顔はここからは見えない。


一体どんな顔で彼女と話しているの?







また胸が締め付けられる。




そして、私は一体どんな顔でこの場に立ち尽くしているの?




見ていたくない。




そう思った時、雪見さんは流瑠の左手を両手でギュッと握り、ニコッと笑って言った。







「…じゃあ。お願いね。流瑠くん」







『流瑠くん』


なぜか、その言葉だけは風に乗って私の耳にしっかり届いた。