赤い狼と黒い兎



鼻を掠める薬品の匂い。

機械的な電子音。

右手に温もり。

…ああ、還って来れたんだあたし。



『……やっぱり』



最後に見たのも、最初に見たのも同じ人。

今ここで寝てる人、それが大切な人。

…いつから、なんだろうなぁ…。



『…唯兎…』



瑠衣が言いたい大切な人は“好きな人”なのかな?

それともそのままの意味……?



『ん〜…?』



やっぱり、瑠衣の言葉を理解するにはまだまだかかりそうだ。



「ん……」



あ、起こしちゃった…かな?

目を擦りながら起き上がる唯兎が、かわいい。