楓は口の中でチョコが解けるまでの間、しばらく黙っていたかと思うと、 「まずい」 と一言つぶやいて、私を見た。 「美味しくなかった?」 「あ、いや、違う。その“まずい”じゃなくて……」 楓は苦笑いしてバーテンの方を向き、チョコ、すごく美味しいです、と早口でフォローした。 「……じゃあ、何がまずいの?」 「ああ、実はさ。お前が手紙嫌いだってこと忘れて、ついつい郵送で送っちゃったんだよ。招待状」 私はチョコをひとつ、口の中に放り込んだ。 「……招待状って、何の?」 「結婚式」