一ヶ月ほどしたある日。
母さんは言った。
『やっぱり、いない』
父さんの部屋を見て
そこで初めてたくさんの涙を流した。
「どうして。
どこに行ったの?
どうして、いないの?
なにがいけなかったの?わたしのなにが・・・!?」
そんなことを言いながらずっと泣き続ける母さんを
俺は後ろから見ていることしかできなかった。
そして、母さんの泣く姿を見て
なんとなく
もう父さんは帰ってこない
ということに気づいた。
母さんはその日を境に人が変わってしまった。
仮面のように笑顔だった母さんなのに
笑うどころか、泣くことも怒ることもやめてしまい
まるで顔のパーツを動かす術を知らない人形のように
ずっと無表情で
そして、なにをするでもなくテーブルにつき父さんの席を見つめていた。


