「本当。
なんか・・・・・
別の人みたいで。」
「・・・・・え?」
わたしの声色の変化に気づいて、また視線をわたしに戻す。
「コートの中だけだと思ってたのに、ちがうんだもん。
嫌になっちゃうよ。
今、こうしてしゃべってるのはわたしがよく知ってる人なのに
なんか違和感あるし。」
そう言って彼を見上げる。
黒に近い焦げ茶の短髪も
おおきな二重のまっすぐな目も
あまり焼けていない肌も
全部、普段どおりの桐山くんの姿なのに
「なんか、違う・・・・」
でも、どこが違うのかわからない。
わからないから、どうしたらいいのかもわからなくて。
じっと彼を見つめる。
沈黙がわたしたちを包んだ。


