彩音side





「バイト頑張れよ」


その一言の後に
柾樹からキスされた時一瞬何が起きたかわからなかった。




「……」


押し黙って目を見開いた私は暫く動けなかった。

…何?これ…



そんな私を余所に柾樹はさらに激しいキスをする。



「…んッ ちょ…」


かき乱された口内で絡め取られる舌に何も考えられなくなっていく…

部屋には私の荒い息遣いと卑猥な水音が響いていた。



息苦しくなった私は唇が離れる頃には呼吸が乱れ、肩で息をしていた。



「大丈夫?」


最後にペロリと唇を舐めあげた柾樹は至近距離で私を射抜く


「…なんっで…いき、なり……キスなんっか…」


「別に?ただしたかったから。」


柾樹が見せるのは余裕の笑みで、切羽詰まって混乱してたのは私だけ。






ただしたかった…?



「…そんな、理由?」


心のどこかで好きだからと言って欲しかったのに…

そんな言葉が聞きたかったんじゃないのに…



意味なくキスなんてしないでほしい…


思わせぶりな事…しないで…


「…私帰るから」


そう告げて逃げるように自分の部屋に帰った私は気付いたときには頬に涙が伝っていた。