彩音side



部屋に入る手前で

「大丈夫だった?」

美菜がいきなり聞いてきた。


何の脈絡もなく言われた言葉に頭をフル回転させて考えた。

しかし、残念だけど私の頭で答えは弾き出される事がないから「え…何が?」と言うしかない。


「柾樹君に助けてもらったんでしょ?」

部屋には入らずに美菜は話し出した。

「…うん。助けてくれたよ。なんで知ってるの?」


「柾樹君に聞いた。
それに彩音が呼び出されたって言ったら柾樹君大部屋飛び出して行ったし」

美菜は近くにあった壁に寄りかかる。
その佇まいから到底同い年には見えない。
気怠そうに壁に寄りかかる美菜はまるで出勤前のホステスみたいだった。


「そっか…美菜ありがと…」


「いい?彩音、自分じゃ気付いてないみたいだけど、アンタはモテるんだからあんまり軽率な行動とったら痛い目見るわよ?
あんま知らない男に簡単に付いて行ったらダメ」

美菜はそう言って私の頭を小突く。


「え…でも佐藤君同じクラスの人だったし…」


「でも怖い目に遭ったでしょ?これからは少しは気をつけなさい」

そう言う美菜はまるでイタズラした子供を咎める母親の様。

ホステスでもあり母親でもある美菜は女として魅力的なんだろう。


「…美菜 ありがと」

一足先に部屋に入った美菜に続き私も部屋に入った。