「えっ?」


少しびっくりした声を出したがすぐに彩音は俺の部屋を後にした。





彩音が持ってきたビーフシチューを食った後に


「マジ悪かったな…」


悪い気がしたのと情けないのとで一杯になりながらも言った。

「いいよ。私も一人じゃ食べきれないし」


笑顔で答える彩音に俺は救われる。



「今度ちゃんと埋め合わせするから。俺風呂入って来るわ」


今度バイト代が出たらあの日彩音が行きたがっていたレストランにでも連れて行こう。
そう思いながら風呂に入った。





風呂から上がると彩音はソファーの上で寝ていた。
時間が時間なだけにもう限界なんだろう…
時計を見れば00:30の文字。



「彩音!起きろ!!」


俺の声でも体をゆすっても彩音は起きない。
どうしたもんかな…と考えた挙げ句仕方なく俺は彩音を抱えてベッドに運んだ。


飯のお礼として。



ベッドに横たわる彩音は幸せそうに目を瞑っていたけれど


「ツバサ…」


そう呟いた彩音の目尻にはうっすら涙が浮かんでいた。



そんな彩音の寝顔を見て何ともいえない感情がこみ上げてくる。




そっと髪をなで目尻の涙を拭った俺は


そのあどけない寝顔の彩音のおでこにそっとキスを落とした―