俺の挨拶も終わりしばらくすると入学式は終わった。
あーだりぃ。
堅苦しいんだよ。
式とかなんとかってさ。
新入生は体育館を後にしそれぞれの教室に向かっていた。
俺も教室に帰ろうと思って歩いていると人混みの中に彩音を見つけた。
こんな大勢の中にいても彩音は他とは一際違うオーラを放っていて目立っている。
真新しい制服から出る細っこい腕を引っ張ると、彩音は小さな悲鳴をあげてこっちを振り返った。
…なんか折れそうだな、とか考えていた俺に
「ってかさ〜新入生代表ならそう言ってよね!お陰様で大恥かいたじゃん!」
彩音は開口一番そう言った。
「ははっ悪い悪い。言うの忘れてたわ」
悪いと思いながらもさっきのトマトもびっくりの真っ赤な顔の彩音を思い出し、笑いが収まらない。
「で、何か用?」
冷ややかな目つきで聞いてきた彩音。
…たぶんあの隣の女には言ったんだろうな…そう思いながらも
「お前あれ他人に言うなよ。」
一応俺は言ってみた。
「あれって?」
彩音は全く思い当たる節がない様で、不思議な顔で俺を見てくる。
「隣同士で住んでる事だよ!!」
どんだけすっとぼけてんだ?思い少しイラついて口調がきつくなってしまった。
その意味を理解したのか、はっとした彩音は急に焦り出した。
「…美菜に言っちゃった…」
声が小さいのか周りがうるさいのか、何て言っているがうまく聞き取れない。
しかもあは〜とか言ってちゃらける彩音。
「はぁ?声ちっせぇよ!!」
そのふざけた態度に思わず俺は彩音を怒鳴りつけてしまった。


