そんなこんなで引っ越しは一段落


新築…とまではいかないけれど、割と小洒落たマンションの一室、真新しい部屋で少し遅い夜ご飯を食べていると



「まさか彩音が一人暮らしするなんてなぁ…」


私の斜め前に座るお父さんがビール片手に少し頬を赤らめながら感慨深げに言い出した。


……お父さん酔ってる…


「本当だよ。お前料理できるのか?」


私の横で肉じゃがを頬張りながら言うお兄ちゃんはその肉じゃがを私が作ったとは気づいていないらしい。


まさかの兄からの貶しに私はキレてもいいのだろうか?


「ちゃんとできるよ!!私お母さんと毎日頑張って練習したんだから!ねっ、お母さん!?」

私は口を尖らせながら目の前に座るお母さんに同意を求めた。


「そぉね〜彩音は最初は料理全然ダメだったけど、今は私より手際が良いくらい上手くなったわね〜」


唯一私を誉めてくれるお母さんは「この味付けバッチリよ」とグーサインをくれた。


「でしょぉっ!私頑張ったもん」


うんうん。私の味方はお母さんだけだよ!お母さん大好きっ!我が母親のほめ言葉に感激していると


「でも何も一人暮らしする程の必要なんてないじゃないか?」


少し怪訝な顔をしたお兄ちゃん。


あ…
あーあーあー…


「……もぉせっかくの始まりの日にそんなこと言わなくても良いでしょー!!私は自立したいの!」


私と兄とのちょっとした戦争が始まろうとした瞬間。


「あっ!お隣さんに挨拶しに行かなくっちゃ!!」


そんな私達の事なんてお構いなしなマイペースな母は、手を大袈裟に叩いていきなり立ち上がった。



ちょっと!!
びっくりするじゃんっ!