その人物は私の髪を撫でる。


その手は思いのほか優しくてその手つきはまるでガラス細工でも扱うかの様。



え…?


その人物に背を向けたまま硬直する私は窓から降り注がれる太陽が、目を閉じていても感じられて眩しく感じた。


「ごめん…」



不意に紡がれた言葉は間違いなく柾樹の声。



そのあまりにも小さな声はどこか穏やかさを含んでいて悲しくも感じた。



そんな事言われたら寝たフリだなんて言えなくてただひたすら黙ってた。




「俺ガキだからいっつもお前の事傷つけてばっかりで…お前の事避けるつもりはなかったんだ…」


「………。」


え、何これ?
柾樹私が寝てるって思って話してるよね?


「彩音の近くにいると手ぇ出したくなって…お前の事恐がらせてしまうから…」


そこで一旦切った柾樹は自虐的なため息を吐いて再び言葉を紡ぐ。


「だから…避けてたんだ。本当に彩音の事が好きだから…嫌われたくなくてこんな事、したんだ」




……涙が出た。