「………お前なんで先に来てんの?」
教室に入って来たのは柾樹で、私を見つけるなり言ったその言葉で誰がどう見ても不機嫌。
私を射抜く視線はもうハンパない。
「えっ!?…私用事があったし、起こしたけど起きなかったから…」
だからバレないように明るく努めて嘘を言った。
………目は見れなかったけど。
「用事って?」
そんな私が不自然だったのか、えらく食いついてくる柾樹。
「い…委員会の!」
「…あそ」
嘘に嘘を重ねる私をじーっと見据えていた柾樹はもう興味がない、というような声色で言って席に着いた。
「…何?ケンカ?」
一連のやりとりを見ていた美菜と悠士君は私に問い掛ける。
「ううん!なんでもないよ!それより美菜トイレ行こう?」
私と柾樹を疑念の眼差しで交互に見ていた美菜を、無理矢理教室から連れ出した。


