一応…
「き、如月煌…だけれど…」
「煌ちゃん? 可愛い名前だね、お姫様」
ゾゾッ…。
「こ、煌ちゃん…? それにお、お前…男に向けて"お姫様"はないんじゃね?」
そう…引き攣って言えば、
「ふふふ。照れてるの、可愛い僕のお姫様? 愛しているよ」
頬に添えられようとした手を払った。
ゾゾゾッ…。
寒い、寒すぎる…。
試しに――
「アホ…」
そう言っても、
「ありがとう…嬉しいよ」
アホの子じゃねえか、この玲。
「アホ、バカ、死ね、カス」
にこにこにこ。
ああ、外貌は確かに玲だけれど…違和感がありすぎる。
玲じゃねえ…。
優しければいいってわけでもねえだろ、幾ら"エディター"でもこれなら偽物だとばればれだって。
これなら、機械と会話しているようなもんだ。
いつもの"えげつなさ"で覆われた玲の方が、よっぽど人間らしい。
そうか…。
玲特有の…"心"がねえんだ。
それがねえから、いつもの"えげつなさ"もねえし、第一あの腹立たしい"色気"もねえ。
ああいうのは…整いすぎる器から滲み出るもんじゃねえんだな。
玲は俺みたいに喜怒哀楽を顔に出さないタイプだけれど、こうして見れば…すぐ"えげつなく"、"色気"を無駄に垂れ流す玲でも、"心"で覆われていたんだと実感する。

