俺の信じる男の反応に、
これ以上――
何を疑えばいいというのか。
もし玲が一言でも、否定していたのなら。
否定した態度をとっていたのなら。
俺は決して認めない。
俺が――
次期当主の座を奪われたなど。
だけど。
納得出来る自分も居る。
東京で俺が、突然孤立して。
俺に媚びていた奴らまでも、皆が手の平を返して"何か"を恐れて。
或いは、今までの恐れを無くして蔑んでいて。
追い詰められて拉致された場所に久涅が居て。
味方のはずの警護団に攻められて。
突然過ぎる不可解な状況を説明出来るものがあるとすれば、
俺にとって紫堂財閥の力は――
対外的にも、斥力作用にしかなっていないということ。
俺は利用することすら出来ない状況にあるということ。
つまり。
状況的に見れば――
久涅の言葉は、夢物語ではない。
ああ――。
夢であれば。
「願い求めよ。
さすれば我は汝等に与えん。
さあ……求めよ。
汝の願いは如何に?」
もしも、玲と桜と遠坂が逝ったあの悪夢の中で。
蘇生できる"たった1人"を選んでいたら。
あの囁きを受け入れていたのなら。
今頃、事態は変わっていたのだろうか。
選びきれなかったから、俺は全てを失う羽目になっているのか。

