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東京都江東区豊洲。


オフィスビルが立ち並ぶ、大規模な商業施設の街。


その一角に…黄幡会本部があった。


1つだけ。異様に天高く聳え立つ、明らかに周囲の建物とは異質な空気を纏う建物は、更にその外壁に特徴があった。


艶やかな漆黒色に、蠢(うごめ)くように走る無数の真紅色。


人工都市"約束の地(カナン)"において、"深淵(ビュトス)"と呼ばれたその塔と瓜二つ。


あまりに奇妙すぎるその塔の正体を見定めようとしただけで、あたしと煌は、容易に黄幡会本部に導かれた。


太陽のような、円だけで構成されたマークが彫られた左門。立ち上がったような蛇の模様が彫られた右門。大きな鉄製の門扉は閉ざされ、その前には門番のように立つ数人の男がいた。


制裁者(アリス)の服を着た、男達。


あたしと煌は固い顔を見合わせた。


そんな時、無精髭を生やした…まるで浮浪者のような身なりの白髪頭の男が走り寄り、門番たる制裁者(アリス)を擦抜けて、強引に中に入ろうとして。


「信仰許可証をご提示下さい」


しかし制裁者(アリス)に淡々とした口調でそう言われて、肩を掴まれる。


"信仰許可証"


耳慣れぬその単語を聞き返したのは、敷地内に入ろうとしていた男で、


「我らが神を模したバッヂがなければ、信者とは認められぬ故、中にはお通しすることはできません」


「そんな…じゃあ家族を返してくれよおッッ!!!」


制裁者(アリス)に掴みかかろうとした男は、一瞬の内に地面に叩き付けられた。


「返せよ、女房と子供を返せよおう!!!」


その騒ぎに、制裁者(アリス)が湧いてきて。


「芹霞、今のうちに」


煌はあたしを担いで、高い門を軽々と飛び越え、大門の内側に入った。