更に櫂が言った。


『紫堂の名の威力がまるでない。それ処か――誰もが俺を"次期当主"と認識するなり、口ではやんわりと…しかし確固たる拒否姿勢になる。掌を返したように』


紫堂の次期当主…『気高き獅子』を拒む?

意味判らねえ!!!



『玲に着せる暖かい上着でも買おうとしても、カードはおろか俺の個人口座から金を下ろすことすらできん。手持ち金で支払いをしようとすれば、警備員や警官が走ってくる。

何かおかしいと、遠坂が持参しているミニPCで銀行にハッキングしたら…"凍結"されてブラックリストに載っているらしい。俺だけじゃない。お前達も全て…全員だ』


「ええ!? 貯金、引き出せないの!!? 何で!!?」


『――…。

"作為的"な気がする。

紫堂より大きな力が動いているような…』


櫂は躊躇いがちに…だけど断言した。


『"追い詰め"ようとして外堀から攻めているんだろう。それしか理由がつかない。でないと、何で突然此処まで拒否られる上に、タイミングよく刺客が放たれるんだ?』


刺客!!?


「櫂、お前…狙われてるのか、また!!!」


携帯を触ろうとしたら、芹霞に慌てて取り上げられた。


本当に携帯って不便だ。


『何処にいてもひっきりなしだ。

こっちもそんなのに構ってる暇ないから、タクシーで高速走らせ、馴染みの東池袋病院に連れて強制的に診察させようとしていたんだが、池袋とは正反対の月島が見えたから…どういうことか運転手を問い詰めれば、黒服の男に俺達の写真を見せられ、乗車したら豊洲まで連れるように金を渡されていたらしい。

車を戻すように言った途端、運転手の頭に銃弾だ』


ああ俺、櫂の護衛なのに…。


お前そんな目に遭ってたのかよ。