「"ディレクター"を超えて、逆転劇を見せてよ?」
"ディレクター"。
ああ、あの…一縷の義兄だとかいう、櫂達を嵌めた男か。
全てはあいつの書いたシナリオということなのか!!?
そして周涅は時計を見て――
「さあ、あと1時間切ったよ?」
ズボンのポケットから何かを取り出し、それを朱貴に投げた。
朱貴は反射的にそれを掴んだ。
「周涅ちゃんの車の鍵。八門の陣は使えないのは判っているでしょう? それでワンちゃん達が望む場所に連れて行ってあげてよ。車走らせればぎりぎり付近には行き着くでしょう」
ありえねえ。
そんなのは親切じゃねえ、絶対何かある。
「何を…企んでいる?」
俺の唸るような威嚇を、周涅は軽く笑い飛ばす。
「だから。"運命"という脚本通りに進むのが、まっこと正であればさ、ワンちゃん? 君の抵抗は意味ないことなんだって。
何があっても結果は変わらない。
行ってみてご覧?
周涅ちゃんの言葉が如何に正しいか判るから」
それは何処までも意味ありげで。
俺の服の裾を、芹霞がぎゅっと掴むのが判った。
不安さを訴えてきた。
俺は――
まだ痛む手を動かし、上から芹霞の手を握りしめた。
「その言葉…後悔させてやるから。
俺は。何があっても、櫂を裏切らないッッ!!」
「ふふふ、折角周涅ちゃん、その言葉を避けてあげてたのにね。どうぞどうぞ、お好きに?
そうそう、紫茉ちゃん。君は周涅ちゃんと此処に居ようね」
「は!!?」
七瀬が驚いた声を出す。
「それが…ワンちゃんと芹霞ちゃんを放つ条件。嫌なら、此処からワンちゃん出さない。どう?」
七瀬は不安げな顔をして、俺と芹霞を見て…力なく頷いた。

