あたしが"決断"するまで、もしかしてあと3時間、時間切れになるまで…ここで櫂を嬲り続ける気かも知れない。


目的地目の前に、行き着くことも出来ないのは屈辱。


あと3時間、攻撃を凌げずタイムオーバーなんて…櫂の矜持は傷つく。


もう…櫂と久涅の力の差は歴然なのかも知れない。


認めたくはないけれど…だけど、櫂と玲くんが束になってもあれだけの余裕で、紫堂の力まで無効化され、更に周涅まで久涅側にいるのなら、此処で対戦している分だけ時間の浪費。


闘わずに目的地に行ける知恵がなければ、きっと勝つことが出来ない。


そう、頭で考えねば…櫂は勝てない。


だけど今、櫂にはそんな余裕はなく。


こんなに早く久涅が現われるなんて、誰も予想していなかったから。


周涅にしか警戒していなかったから。


櫂も玲くんも…今の戦闘で頭が一杯のはずだ。


だとしたら、考えるべき人間は…闘わずにいる側の人間で。


つまり、それはあたししか出来ないこと。


今の逆境を打開する為には、それしかないのだと…久涅はわざわざそれを見せつけ、視線で促した。


櫂の身体だけではなく、『気高き獅子』としての矜持まで破壊させて…櫂に何も残らなくなるまで、少しずつ奪いながら、じわじわじわじわ攻撃しているのを、見ていられるのならそこで黙っていろと言ってきた。



何であたし?


大いなる疑問は湧くけれど、幸いにもあたしにその採択権があるというのなら…目一杯行使してあげる。



「久涅!!!!」



だから――


「取引しよう!!!」



受けてやる。