―だが。
「…うるさいなぁ、もう」
寝ているサアヤが、顔をしかめながら呟いた。
「静かにしてよぉ」
そう言いながら、自分の肩をポンポンと叩く。
すると―サアヤの体から黒い影がズズズッ…と出てきた。
ソレは耳も鼻も目もない、口だけの大きな黒い顔。
彼女の先祖が己の血筋にかけた【呪いと祝福】が実体化したモノ―だった。
ソレは女の子の背中の上を、一瞬にして通り、壁に着地した。
モギュ、ゴキュ、ゴリ…、ニチャ…
不愉快な水音が、蠢くソレから聞こえてくる。
そして女の子は気付く。
さっきまで自分の肩に触れ、声をかけていたモノがいなくなっていることに。
「まさか…!」
女の子は慌ててソレとサアヤを交互に見る。
月光に浮かび出されたサアヤの影が、女の子の体を横切り、ソレと繋がっていた。
ソレは何度か咀嚼した後、ゴキュリっと飲み込み、ゲフッとゲップをしたらしい。
そして影を伸ばしながら、廊下へ続くふすまの方に向かった。
ソレは締まっているふすまの間を通り、部屋から出ていった。
「…うるさいなぁ、もう」
寝ているサアヤが、顔をしかめながら呟いた。
「静かにしてよぉ」
そう言いながら、自分の肩をポンポンと叩く。
すると―サアヤの体から黒い影がズズズッ…と出てきた。
ソレは耳も鼻も目もない、口だけの大きな黒い顔。
彼女の先祖が己の血筋にかけた【呪いと祝福】が実体化したモノ―だった。
ソレは女の子の背中の上を、一瞬にして通り、壁に着地した。
モギュ、ゴキュ、ゴリ…、ニチャ…
不愉快な水音が、蠢くソレから聞こえてくる。
そして女の子は気付く。
さっきまで自分の肩に触れ、声をかけていたモノがいなくなっていることに。
「まさか…!」
女の子は慌ててソレとサアヤを交互に見る。
月光に浮かび出されたサアヤの影が、女の子の体を横切り、ソレと繋がっていた。
ソレは何度か咀嚼した後、ゴキュリっと飲み込み、ゲフッとゲップをしたらしい。
そして影を伸ばしながら、廊下へ続くふすまの方に向かった。
ソレは締まっているふすまの間を通り、部屋から出ていった。

