うちの会社に新しく役員が入るらしい、と噂を聞いた。 でも私には関係ない話な訳で。 だって私はただの一会社員だから。 だからまさか出会ってしまうことなんて、考えもしていなかったの。 「―――上村ー。出来上がったかぁ?」 先輩の声に私は一拍遅れて顔を上げなんとか笑ってみせる。 「お、終わりましたよ………休憩行ってきます」 私は先輩に書類を渡すと、代わりにお駄賃の千円札を握らされそのまま席を立った。