あたしがぶつかった衝撃で、その人はそのまま横に倒れた。
ばしゃっと水が跳ねる音がする。


「きゃー!本当にごめんなさい!だいじょ…。」


起き上ることもせず、そのままぐったりと倒れたままのその人に、背筋が凍る。


「えっ?やだやだ!打ちどころ悪かった?え、えっと大丈夫!?」


駆け寄って身体をゆっくり起こす。
口元に手をかざすと、呼吸が掌で感じられた。


「あ、良かった…死んでない。」


でも呼吸が荒い。
雨は冷たいはずなのに、その子の身体は熱い。


「っ…はぁ…はぁ…ん…っ…はぁ…。」


荒い呼吸を繰り返し、苦しそうに表情を歪める。


「熱…だよね…これ…っていうか子ども…?」


背丈は150センチといったところだろう。
細い身体に、傷だらけの頬が痛々しい。
…男の子、だろうな。


「どうしたんだろ…こんな時間に子どもが一人で…。
って今はどうでもいいや!そんなことっ!」


あたしはその子を抱きかかえて歩き出した。


「…かえ…り…たく…ないっ…。」

「え…?」


不意に男の子がそう言った。