『嵐のスタートを祝して、今夜は宴会でも開きましょうか?』

「あ、いいですね!あとでお酒買いに行きましょう。
あー…でも、あたしと雪城さんだけになっちゃうかも。この様子だと。」

『それでもいいんじゃないですか?』

「え…?」

『始まりは二人だけでも、いつかみんなで笑ってこのテーブルを囲むことができれば、それで。』


…そんな考え方もあるんだ、とこの時あたしは本当に素直にそう思った。
それがいつ来る〝いつか〟なのかは分からない。
もしかしたらいつまで経っても来ない〝いつか〟なのかもしれないけれど。


それでも、雪城さんがあたしを〝太陽〟みたいだと思ってくれているのならば、〝太陽〟で在り続けたいと少しだけ思う。
空には空の闇にも似た哀しい記憶があって。
彼には彼の抱える何かがあって。
そして雪城さんもきっと、何かを抱え持っていて。


全てを越えるなんて、そんなことは簡単にできないと知っているけど…
でも〝いつか〟をほんの少しだけ期待してしまう。


あたしの世界が広がって、空の世界も広がって。
ここにみんなで住むってことが、あたしの色しかなかったあたしの世界に色を加えていく、そんな気がする。


「そうですね。素敵な考え方だと思います!」

『ありがとう。』


雪城さんの『ありがとう』は、何故かとても素直に受け取れて、思わず笑顔になる。
そしてとても、心が温かくなる。


「あ、そうだ!二人に朝ごはん届けましょう。
今度はあたしが作りますよ。」

『じゃあ僕は食器片付けます。』

「はいっ!」