「温かい?」

「…それなりには。」

「素直じゃない口は封じちゃうぞー!」

「…飽きないの?」

「え?何が?」

「抱きしめたりキスしたり…そういうの。」

「飽きないよー?だって相手が里穂だからさ。
いつでも抱きしめたいしいつでもキスしたいよ?」


屈託のない笑顔で年不相応に首を少し傾げつつ、こんなことをさらっと言ってのける貴也。
…本当にモノ好き、よね。


ふっと、視界が貴也だけになった。
まさに言葉で言い表すなら『唇を奪われた』。
余韻が残る程度には強いキスの感覚が、後からじわりとやってくる。


「…今年、人生で一番幸せなバレンタインかも。」

「…まだ13日よ。」

「あ、そっか。じゃー一緒に過ごしちゃう?」

「私の母親が許さないわよ、そんなこと。」

「あー…そうだよなぁ…。
じゃ、また明日も会おう。
俺んち遊びにおいで。ご飯作ってあげる。」

「料理できるの?」

「もちろん!で、一緒に里穂のガトーショコラ食べよ?」

「…そうね。」

「え、いいの?」

「提案したのはそっちでしょ?」

「そうだけど…まさか里穂がすんなり了承してくれるとは…。」

「せっかくなら『美味しい』って言葉、ちゃんと直接聞きたいじゃない。」


私は貴也の目を見つめ、そう言った。