何故、ウォルターが・・・?
―――ここで少し時は遡る。
アランが城下より帰城して間もなくの頃のこと。
政務塔から通じる渡り廊下の隅、塔の入口で焦りを含んだ小さな声がひっそりと響いた。
「エミリー様が部屋に戻られていない!?」
眉を寄せ、信じられないといった面持ちで部下の警備兵を見つめるウォルター。
「はい。嵐の後、確かに一度もここを通られておりません。故に、部屋には戻られていないと思われます」
「まさか・・・。あの状況で部屋以外にどこに行かれたというのだ―――確かめに行く。お前も一緒に来い」
急いで塔の中に入り、警備兵とともに部屋に向かった。
コンコンッ―――
「エミリー様?居られますか?」
扉の向こうに意識を集中させる。
中はしんと静まり返り、物音一つしない。
「・・・失礼いたします」
念のため、部屋の中を確認するように見渡してみたが、姿はない。
テラスにも出られていない。
あの時、書籍室から部屋に戻るよう促したのは、私だ。
確かにメイと一緒に部屋に戻られていくのを見送った。
まさか部屋に居ないなど、アラン様にどう報告すればいいのだ―――
最近、塔の周りで不穏な気配がするから気をつけるようにと、パトリック様から言われている。
まさかとは思うが・・・。
被害確認などに気を取られ、塔まで護衛をつけなかったことが悔やまれる。
ウォルターは唇を噛みしめ、主のいない部屋の中を睨んだ。
アラン様が帰城されてまもなく、気になさっていたのはエミリー様のことだ。
私が”メイと一緒に塔の部屋に戻られ、お怪我はございません”と申し上げたら、安堵の息を漏らされていた。
今は腕の手当てのために医務室に行かれているが、その後すぐにこちらに来られるだろう・・・。
「お前は護衛兵と一緒に塔内をくまなく探せ。私は医務室に向かう」
とにかくこのことは急ぎ報告し、指示を仰がなければ。
眉を寄せた険しい表情で、足早に廊下を進むウォルター。
窓の外はあんなに酷かった雨がすでに止み、月が顔を覗かせている。
暗かった塔にも柔らかな光が差し込んでくる。
そんな中、政務塔に向かうウォルターの急ぐ足がピタリと止まった。
自分の足音と別のものが、遠くから微かに聞こえてくる。
それは周囲を警戒して足音を消しているような感じだ。
妙だな・・・何故、足音を消している?
―――誰だ・・・・?
―――ここで少し時は遡る。
アランが城下より帰城して間もなくの頃のこと。
政務塔から通じる渡り廊下の隅、塔の入口で焦りを含んだ小さな声がひっそりと響いた。
「エミリー様が部屋に戻られていない!?」
眉を寄せ、信じられないといった面持ちで部下の警備兵を見つめるウォルター。
「はい。嵐の後、確かに一度もここを通られておりません。故に、部屋には戻られていないと思われます」
「まさか・・・。あの状況で部屋以外にどこに行かれたというのだ―――確かめに行く。お前も一緒に来い」
急いで塔の中に入り、警備兵とともに部屋に向かった。
コンコンッ―――
「エミリー様?居られますか?」
扉の向こうに意識を集中させる。
中はしんと静まり返り、物音一つしない。
「・・・失礼いたします」
念のため、部屋の中を確認するように見渡してみたが、姿はない。
テラスにも出られていない。
あの時、書籍室から部屋に戻るよう促したのは、私だ。
確かにメイと一緒に部屋に戻られていくのを見送った。
まさか部屋に居ないなど、アラン様にどう報告すればいいのだ―――
最近、塔の周りで不穏な気配がするから気をつけるようにと、パトリック様から言われている。
まさかとは思うが・・・。
被害確認などに気を取られ、塔まで護衛をつけなかったことが悔やまれる。
ウォルターは唇を噛みしめ、主のいない部屋の中を睨んだ。
アラン様が帰城されてまもなく、気になさっていたのはエミリー様のことだ。
私が”メイと一緒に塔の部屋に戻られ、お怪我はございません”と申し上げたら、安堵の息を漏らされていた。
今は腕の手当てのために医務室に行かれているが、その後すぐにこちらに来られるだろう・・・。
「お前は護衛兵と一緒に塔内をくまなく探せ。私は医務室に向かう」
とにかくこのことは急ぎ報告し、指示を仰がなければ。
眉を寄せた険しい表情で、足早に廊下を進むウォルター。
窓の外はあんなに酷かった雨がすでに止み、月が顔を覗かせている。
暗かった塔にも柔らかな光が差し込んでくる。
そんな中、政務塔に向かうウォルターの急ぐ足がピタリと止まった。
自分の足音と別のものが、遠くから微かに聞こえてくる。
それは周囲を警戒して足音を消しているような感じだ。
妙だな・・・何故、足音を消している?
―――誰だ・・・・?


