ギディオンの街外れ。

空に浮かぶ月に厚い雲がかかり、辺りが暗闇に沈んでいく。

獣の遠吠えが、不気味に辺りに響いている。

木立に囲まれた古びた屋敷の中、男たちはひっそりと集まっていた。


―――今日はあの方が来られる日だ。

娘を攫ってくるよう命じられたあの日から何日経っただろう。

未だに事は遂げられず、たてた計画はことごとく失敗してしまった。
これは、まずい―――どう報告したものか・・・。


蝋燭の灯り一つの薄暗い部屋の中で男は苛々と歩き回った。

部屋の隅では3人の男たちが身を縮めて座っている。

「娘一人に何をそんなに、てこずっている!?」

あまりの不甲斐なさに睨みつけると、腹立ち紛れに傍にあった机をバンッと叩いた。

「しかし・・・あの娘、何故だかいつも傍に人が居りまして・・・」

「滅多に塔の外に出てきませんし・・・思ったように事が運びません」

「それに私共、上から目をつけられて、動きにくくて・・・」

以前腕に包帯を巻いていた男が、申し訳なさそうに言い訳を始めると、他の2人も堰を切ったように次々と訴え始めた。


聞いている男の頬はピクピク痙攣し、眉間には深い溝が刻まれ、唇はわなわなと震えている。

「警備が厳しい今は無理かと・・・」

「無理!?無理でも何でもここに娘を連れてくるのが、お前たちの仕事だ。いいか?もっと頭を使え。お前のその頭は何のためにある!?ただの飾りか?大体お前たちは―――」

3人に詰め寄っていると、部屋の扉がギィッときしむ音をさせて開かれた。


「まぁ、そう怒鳴るな。外まで聞こえる」

黒いマントを着た男は部屋に入ってくると、落ちついた声で窘めた。

その男は壁際の椅子に腰かけ、足を組むと男たちを見据えた。

「申し訳ありません。あまりにも不甲斐なきため―――」

さっきまで怒りで赤かった顔が見る間に青くなっていく。

他の3人も床に跪いて頭を下げ、わなわなと震えだした。


「お前たちには期待していた・・・残念だ」

俯いて青ざめる男たちを見ながら冷たく言い放つ黒マントの男。

その落ち着きのある声が、余計に恐怖を掻き立てる。


男たちは震えながら、すがるような瞳を向ける。

「どうか、もう一度チャンスを・・・今度お会いする時には、必ず娘をここに」


数刻の沈黙の中、黒マントの男が懐から小さな封筒を取り出した。

「ボスからだ・・・」

震える手で受け取り、封筒を開けて読み始めたのを確認すると、黒マントの男は無言で出ていった。