不意打ちに繰り出された愛らしい攻撃に、何の備えもしていなかったアラン。

一瞬ビクッと体を震わせる。

愛しい人が自分の胸に顔を埋め、上目づかいに自分を見て”ありがとう”と言っている。

背中にまわされた細くか弱い腕の感触に、保っていた理性が吹き飛びそうになる。

このまま抱きしめて自分の物にしてしまいたい衝動に駆られる。


私はこの国の王子だ。

望めば何でも叶えることができる身だ。

一言夜伽を命じれば、本人の意思に関係なくそれは実行される。

しかし、それだけはしてはいけないことだ。

アメジストの瞳を曇らせるようなことは決してしないとテラスで誓った。

エミリーの意思を無視し、自分の欲望のままその身体に触れることは許されない。


細くしなやかな体を包み込もうとしている腕を、僅かに残った理性が何とか押し留める。

「・・・ほら、もうすぐ終わる」

華奢な肩に手を置くと、優しく体から離した。

見ると、草原は始まりとは逆の波紋が広がり、光が徐々に消えていく。

空からは光を失った綿毛がゆらゆらと舞い落ちてくる。

空に浮かぶ新月は2つに別れ、草原に風が戻ってサワサワと音を立て始めた。

遠くでは再び獣の声が響き始め、森のざわめきが戻ってきた。


こうして満天の星空と綿毛の織りなす、儚くも美しい光のショーは終わりを告げた。


時刻は深夜をまわっている。

馬の背の心地よく刻む一定のリズムに、いつの間にか腕の中で寝息を立てているエミリー。

その寝顔はとても安らかで愛らしい。


「会食であんな思いをさせてすまなかった・・・」


目の前の愛しい人は自分の腕の中で、何の警戒も不安もなく身を任せてくれて眠っている。

その重みが堪らなく嬉しい。


「・・・これくらいは、許せ」


呟くと、ふんわりと結われているブロンドの髪に唇を落とした。