暗闇から微かに聞こえる水の音。


僅かに漂う花の甘い香り。

遠くから聞こえてくる、何か叫んでいるような声

―――あなたは・・・誰―――?



「・・・・う・・・ん」


小さなうめき声とともに、形の良い眉が苦しそうに歪んだ。


徐々に覚醒していく意識の中、僅かに感じるのは、湿った土と草のにおい。



ぐったりと投げ出された白く細い腕。


その指先に触れるのは、柔らかな草。


長いまつげが僅かに震え、数回の瞬きと共に、綺麗なアメジストにも似た、美しい紫の瞳が覗いた。


「ここは・・・・」

草の香りと僅かに漂う柔らかな甘い花の香りを感じながら、身体を起こす少女。


――――――っ!


途端に、襲いくる頭痛とクラクラとした目眩・・・。



「寒いわ・・・」


長い間ここで倒れていたのか、随分身体が冷えてしまっていた。


悴んだ手。力が入らずに、再び地面に倒れ込んでしまう。


片手で額を抑え、襲いくる脈打つ痛みと目眩に耐えながら



少女はゆっくりと身体を起こした。