月明かりに照らされた小さな娘は規則的な寝息をたてていた。 隣で熟睡する我が子の頭を優しく撫で、父はある紙をじっと見つめる。 その紙の色は白。 内容は達筆な黒字で以下のように書かれていた。 ――明日八月二十日午前十一時三十分、第三〇三海軍航空隊 原田成一大佐 訪問 「……三〇三航空隊」 この簡潔な文が何なのか。 静寂に包まれた部屋で蛍詩は小さなため息をついた。