例のマグカップに二人が好きな紅茶を注いで、俺はリビングに戻ってきた。





 俺の手の中のマグカップを見て、由美奈ちゃんが形のいい瞳を丸くなる。


 カップを指を差して小さく『あっ』と言った。
 


―――おっ、カップに気付いたね。



 驚きと嬉しさが素直に感じられるその顔。


 少し子供っぽくも見えるけど。

 俺は『由美奈ちゃんらしくて可愛い』と感じた。



 
 ところが。

 由美奈ちゃんはすぐさまその指を下ろして、自分の膝に揃えて乗せた。



 口元だけを微笑ませて、静かに告げる。

「そのカップ、ペアなんですね。
 三山さんがご自分で買われたんですか?」
 

 形のいい目を柔らかく細めて、俺に尋ねてくる。





 また、何かが引っかかった。