「フラれるのが、離れるのが怖くて、言い出せないでいる」
「っ、…」
ギリリ、と翼が唇を噛み締める。一番痛いところをあたしが突いているから。
「逃げても解決なんてしない、分かってるのにどうして目を背けるんでしょう」
少し前の自分を思い出しながら、その時の自分に言い聞かせるようにあたしは言葉を続ける。
後悔、してほしくないから。
「ちゃんと向き合うべきなんじゃないですか」
「…そんなの言われなくたって、」
「本当に分かってるんですか?」
じわり。
膝の上で握りしめた拳が汗で濡れる。
「分かってて逃げてるんですか、卑怯ですね」
「っ、!それは…っ、向こうだって同じじゃない…!!」
あ、爆発させちゃった。
バンと音を立ててテーブルが揺れる。甘ったるいコーヒーも支えをなくして傾き、呆気なくこぼれてしまった。
「私だってそんな事分かってる…!結局理由を聞くのが怖いだけなの…っ、」


