強い口調できっぱり否定する。一番否定したいのは翼の筈なのに。
「話し掛けても返事は素っ気ないし、いつも上の空で私の話なんて聞く気ないみたいだし」
クルクル、コーヒーをかき回しながら笑う。悲しい気持ちを隠すように。
「二人きりになってもキスすらしてくれない。それどころか仕事で用があるとか言ってどっか行っちゃうのよ。私と二人でいるのが嫌みたい」
翼の泣きそうな顔を見ていると、あたしまで鼻がつんと痛くなった。でも流すまいとグッと堪える。
泣くのは、あたしじゃないから。
「……もうさ、嫌いになったならそう言えばいいじゃん?私だって束縛する気ないし。中途半端に繋ぎ止められてる方がよっぽど辛いっつーの」
「でも、本当は別れたくないから言わないんでしょう?距離があることも、気付かないフリしてる」
あたしがそう言うと、翼は苛立ったようにかき混ぜていたスプーンをテーブルに放った。
ガチャン、金属の冷たい音がする。


