「……甘党なんですか」
ポチャン、またひとつ翼がホットコーヒーに角砂糖を入れる。これで4個目だ。
「糖分摂らないと苛々しちゃうの」
「…なるほど」
ポチャン―――角砂糖を5つ入れたところで、ようやくスプーンでかき混ぜる。
……甘そ。
「それで、……どこから話せばいいのかな」
静かな部屋に、翼の迷いを含んだ声が響く。あたしはただ、翼の言葉を待っていた。
「私ね、朝陽に嫌われたの」
「え…?」
唐突に吐き出された、嫌いという単語。
「喧嘩じゃない。私が一方的に飽きられただけ」
淡々、と。でもその言葉には言い表せないほどの重みがあって。
まだ何も聞いてないのに、あたしは泣きそうになってしまった。
「朝陽の様子に違和感を感じ始めたのは、一週間前のこと。誰が見ても分かるくらい、明らかに私に余所余所しくなった」
「……気のせいじゃ、」
「そんなわけない。そんなの絶対有り得ない」


