「おっ、お待たせしました…!」
「遅ーい」
部屋の前でしゃがみこんでいた翼に駆け寄り、平謝りする。
「あんた何してたわけ」
両手を合わせてペコペコしてると、冷たい翼の声が頭に降ってくる。
「へ、」
顔を上げると、じとーっとした目で軽蔑したようにあたしを見上げる。
「顔赤い。私を待たせて八木原斎と何してたかって聞いてんの」
っ…!!?
何で分かるんですか!見てたんですか!!
紡ごうとした言葉は声にならず、口がパクパクと動くだけ。
「……図星か」
「っ、い…いや、あのっ」
「別にいいよ、咎める理由ないし」
翼はだるそうに立ち上がってガシガシと髪を掻いた。
笑みを浮かべていても、どこか悲しそうで。やっぱり何かあったんだなと思う。
「入って下さい」
ガチャガチャと扉を開けて、翼を促す。少し躊躇った顔をしながら、翼は足を踏み入れた。


