「蒼空、帰んのか?」



さっきからそわそわ落ち着かない蒼空に声を掛けると、蒼空はビクリと肩を震わせて俺を見た。





「あ…えと、はい」



寮には戻るみたいだけど、…何か隠してんな。






「蒼空」


「は、はい…何でしょうか八木原君」



両手を机について、蒼空を机と俺で挟む。後ずさってもガタリ机が音を立てるだけ。




「俺に隠し事はなし。全部言え」


どんな小さい事も秘密にされたくない。ただの我が儘だけど、譲れない。






「っ、でも…あの」



俺と距離が近いのを気にしてるのか、蒼空はふいと顔を逸らし目を泳がせる。





「言ってみ、どした?」



「……っ」




やがて決心したように蒼空が顔を上げて。


「松神先生と、翼の事です…」




あぁ、やっぱり。と心の中で思った。


俺が喧嘩したなんて言ったから、気にしてるんじゃないかとは思ってたし。






「これから、翼に話を聞きます……」