「……怪我してる」
え?
櫻田君に促され、その指が示す方へ目を動かす。それは自分の膝へと辿り着いた。
「あ、」
ほんとだ……さっき机に当たった時かな。
傷というのは、そうと分かると急に痛み出すもので。あたしは痛みを我慢するために痛々しく腫れたそこを手で覆う。
覆ったところで痛みが和らぐはずないんだけど……。
「保健室、行くか」
八木原君があたしに近づき、しゃがみこむ。何してるんだろうと首を傾げた瞬間、ふわり身体が宙に浮いた。
「え、え!!?」
あれ、なにこれ!?もしかして、お姫様抱っこされてる!!?
「じっとしてろ、落っこちるぞ」
周りの目なんかこれっぽちも気にしてない様子で、八木原君はあたしを抱えなおす。
無理です無理無理!こんなの恥ずかしすぎるって!!!
八木原君の腕の中で抵抗を試みるものの、それは呆気なく失敗に終わる。彼の力には到底敵うはずがないのだ。
分かってるけど、だからといってじっとなんてしていられない。
「お、降ろして下さい……!」
「抜けがけすんなよ斎!俺が連れて行くって!!」


