その女の人は、人より少し色素の薄い髪を、後ろで一つにまとめていて、スーツを着ていた。
スーツを着ているけど、どこかぎこちなくて、スーツを着ているというより、スーツに着せられてるって感じだった。
僕は、なんとなく、園長さんが僕を呼んだ理由がわかっていた。
最近、僕の周りの子が、少しずついなくなっていることがあった。施設内で、その子と中が良かった子は、泣きながら、園長さんに訴えていたけど、園長さんは黙って何も言わなかった。
僕は知っていた。ていうか、僕辺りの歳になると、ここがどういうところで、僕たちがどういう状況に置かれているかも、大体はわかっていた。
「椿、この方は、佐藤留美さん。君を、引き取りたいと申し出てくれたよ。」
佐藤留美。そう園長さんが紹介した女の人は、ニッコリと笑った。別に作り笑いをしているわけでもないのに、僕はその女の人が、悲しそうに一瞬見えた。
僕が、ペコリと頭を下げると、女の人はまた今度は嬉しそうに笑った。
不思議な人だな。僕が最初に思った、ルミさんの第一印象だった。



