「じゃあ、なんでルミさんは、僕を引き取ったんですか?」





これは、園長室の会話で聞いた。もう一度、聞いてみたかった。僕とルミさんが似ていると。





「なんでって……なんでだろうね。私もわからないや。」





ルミさんは、何も語らなかった。でも、ルミさんはいたずらっ子のように笑っていた。まるで、僕が園長室で盗み聞きしていたのを知っているように……





「ルミさん。ルミさんにとって、僕はなんですか?」





すぐに答えて欲しかった。そしたら、僕は明日から胸を張って、言える気がしたんだ。ルミさんは、僕の……





「何って、息子に決まってるじゃない。」





僕は、嬉しかった。一瞬のためらい無く、僕のことを息子だと言ってくれるのが……僕は、明日から胸を張って、ルミさんのことをお母さんだと言えるだろう。僕らの間には、血の繋がりもないし、思い出だってまだ無い。





僕が生きてることになんて、意味があっても無くても、生きるしかないんだ。生きる意味なんて、大切な人がいれば、それで十分じゃないか。僕は、こうやって、なに不自由なく生きているんだから……





「……お母さん。」





僕は、ルミさんに抱きついたまま呟いてみた。





「うん。」





頷くルミさんが、僕に顔を見せなかったのは、涙を流していたからかな?





僕のお母さんは、不思議で少し口が悪いけど、優しくて少し涙もろい。





つづく