よく、欲張らないね。とか、いい子だね。とか、言われるけど、自分ではよくわからない。





意識してやったことなんて、一度もないし、僕が必要なものは、すべて揃ってる。それだけのことだ。





「椿、ちょっとおいで。」




僕が暮らすのは、町外れにある小さな施設。すみれ園。





ここには、僕と同じで、親と暮らせない子達が集まっている。僕より、小さい子もいるし、もちろん大きい子もいる。





僕は、その中で毎日生活をしていた。物心ついた時にはこの生活が当たり前だったし、別に違和感など、これっぽっちも無かった。





同じ、学校の子から、お前の暮らしは変だと言われても、そうだね。としか言わないのは、変だとわかっていても、僕にとっては、それが当たり前だから。





「はい。」





ある日。僕は園長さんに呼ばれて園長室に行く。園長さんは、独身なのに、僕たちを大切に育ててくれる、優しい人だ。





僕が、園長室に入ると、いつもより甘い香りがした。何て言うか、キツくはないけど、嗅ぐとわかるようなそんな微かな甘い香り。





理由は、すぐにわかった。園長室には、園長さんと僕ともう一人、若い女の人がいた。