「えっ?」吉野は首を傾げた
ようやく三人は離れて
吉野を真剣に見つめる

「お前のクラスメートの…柳千裕って奴が…。」

柳千裕?

聞いたことも無い名前に、吉野はさらに首を傾げた

いや、クラスメートの名前なんて
吉野が知らないのは当然のことだった

「凄く綺麗な子で、吉野と接触したって言ってたけど…。」

「…あ。」

柚歌の言葉に、吉野の頭に浮かぶある人物
あの世界で…二回出会った変な女

意味深な事ばっかふっかけてきた怪しい奴
ソイツが…?

「実はソイツ…長老会のメンバーだった、藤澤さんに作られた存在だったらしい。」

「は?」空の言葉を
吉野はすぐに理解出来なかった

そりゃ、只者じゃないとは思っていたけど
てか…藤澤さんが長老会?

「落ち着いて聞いて、吉野。彼女は自分の役割を果たす為に…自分の心を代償に、吉野を救ったのよ。」

「えっ…?」

俺を…?

「だから君は今ここにいる。彼女が…自分を犠牲にして救ってくれたの。」

柚歌が述べる真実は
吉野に重くのしかかった

また

誰かを犠牲にして…助かってしまった


「けど、お前が思い詰める必要は無い。これはアイツが望んだ事で、「分かってるよ、海。」

予想以上に冷静な声に
海は「えっ?」と目を丸くする

「ここで俺が立ち止まったら、ソイツの努力が無駄になる。俺はこの真実を受け入れて…生きていかなきゃならないんだ。」

自分の胸に手を当てて
吉野はそう告げた


彼女が救ってくれたこの心には
きっと…彼女の心も宿っている

「吉野…。」三人は安堵の息を吐いた

彼は成長した

出会った頃とは、比べ物にならないくらいに…


「御早う、選ばれし者達。」