規則の守護者

所長室には、大抵いつも明かりが点いていた。

部屋に置かれた広い机は、雑多な本と書類に埋め尽くされている。

きっとこの人は勉強好きなんだと、本の1冊すら読まない茜は結論づけた。


「業務報告、お疲れ様。

義史君、だっけ。
この仕事には、もう慣れた?」


書類とにらめっこしていた所長は、茜の業務報告を聞き終わると、顔を上げてそう話し掛けた。


「はい。

まだまだ失敗が多いですが、頑張ります」


茜は、はきはきと喋る。

部活で身に付いたこの喋り方のおかげで、周りの人々には、実は気が弱いことを知られずにきた。


そんな茜を見て、所長は何か思いついたのか、椅子を回して茜と向かい合う。

そして、おどけたように聞いた。