「おう、ありがとな」
―たまに思う時がある。
本当にたまに、
宙はあたしを別人のような優しい目で見つめる
ルナティックに行くにはいつもの道の裏側を通らなきゃならない。
普段は使わない細くて夜はちょっぴり怖い道だ。今は昼間だし、ふたりだから怖くはないけど…。
あたしは、見たくないものを見ることになってしまうんだ。
「今さらだけど、なんで相合い傘なのよー宙なんかと」
道は本当に人目につかないから、カップルがよく使う道とも噂されていて。
「文句言うなっつの」
「いやーだって彼氏でもないし」
なんて無邪気に軽口を叩けるのも、あたしが無知で馬鹿だったからで。
「そりゃお前の彼氏はかい――…」
真っ先に気がついたのは宙だった。止まった右足を不自然だと思って視線の先を見つめると――。


