「気を付けろよ、ウブ子。挙兵組にゃあ男がわんさかいるんだ、しかも飢えているから狼。危ないねぇ、喰われちまうかもしれない」


そう言いながら、くるりと踵を返す高杉さん。

その背中を見ながら、つい私は呟いた。


「………なんで」


「なんでかってぇ?そりゃマジで聞いてるんかよ、朔姫?」


なんと、すでに遠ざかりつつあるくせに私の呟きを拾って、歩みを止めることなく答える。

すごい。


「い、」


「お前、可愛いから。つかウブな女子はやっぱ狼にとっちゃうめぇよ、ウン」


「や、ちが」


「つぅことで、俺の願いはお前が喰われちまわないことだなぁ」


ヒラリ、後ろ手を振る高杉さんに、私は拳を作った。

チクショ、私ったら高杉さんの言葉に体温上げてばっかだ。

向こうはきっとそんなこと意識していないだろうに、私ばかり勝手に。

悔しい悔しい、けれども胸のうちがあったかい。

……それもまた悔しくて、私は声を張り上げた。


「高杉さんが、――……っ怪我を、しませんように!それが、私のお願いです!しないでください!」


それが、聞こえたのか否か。

でも、高杉さんが「おっかねぇ」とでも言うように肩をすくめたのが見えた、気がした。