その言葉の主が伊藤さんだとわかった瞬間に、私は諦めた。

あの伊藤さんが言うなら。

はー、っと盛大(つまり、あからさまに)ため息をついて高杉さんを見れば、とても不機嫌そうな顔。


「座れ、朔。この俺様がしっかりと説教してやる」


「はぁ……何を、ですか」


「わかりきった事を」


ドカ、と私の前に座りながら、高杉さんはふんと鼻を鳴らす。

いえ、残念ながらわからないのです。

沢山、沢山該当するものがあって、わからないのですよ、高杉さん。

そして、沈黙する私に対する答えは、……珍しく、沈黙だった。

じぃっと私を見て、ひとつ頷く。

見る、と言うよりは観察する、だ。

目が合っているようで、合っていない。

私を見ているようで、違うんだ。

もっと、奥深くを覗いているような……?


「……高杉さん、」


沈黙に耐えかねて、私は口を開いた。

とは言え、回りには隊士の方たちが沢山いらっしゃるのだから、しーんとしている訳ではない。

ただ、二人の空間が既に出来てしまっていて、その空間の中で私は沈黙に耐えきれなかった。


「なんだ?」


短い返答。


「……、」


ひとつ、息を吸った。

さて、次に何を言うかが問題だ。