「本当の父親だって言う前王は、わたしを殺そうとしたんでしょう?
 それだけじゃなく、前王はお母さんだって……!
 お父さんは、そんな前王から、わたしを守ってくれたんじゃない!」

 必死に守って、育ててくれた『お父さん』を嫌いになんて、なれない。

 なりたくなんてない……!

 ヒトを殺した罪は重いけれど、自分が死んだら逃げるだけじゃない。

 償うこともできないじゃない!

 生きていようよ。

 きっと、どっかで何か返せることがあるかもしれない。


 いっぱい、いっぱい。

 お父さんの胸をぽかぽか叩きながら、しゃべったけど。

 涙があふれて、どのくらい『言葉』になったんだろう。

 お父さんの心に届いたろう?

 とても不安だったけれど。

 やがてお父さんは『……判った』って呟いて。

 わたしをぎゅっと抱きしめてくれたんだ。



 そして。

 ひとしきり、泣いて、泣いて、ようやく。

 わたしが。お父さんから離れた途端だった。

 止める間もなく星羅の拳が唸った。



 ばきっ! と。


 さっき、自分が殴られたのと同じぐらいの重さの拳を返して、星羅がお父さんを睨んだ。

「……桜路の拳も、容赦ねぇな」

 ててて、と低く呟いてお父さんは、殴られた頬をさする。

「当たり前だ。
 君が真衣をこんなに泣かしたんだからな!」

 星羅は殴られ、よろけたお父さんに足音高く、つかつかと近づくと。

 その胸倉を掴まんばかりに詰め寄って言った。

「フルメタル・ファングのおかげで、一応は覇王を制御出来たけれど、フェアリーランドはこのありさまだ。
 当分僕一人で踏ん張るけれど、覇王は復活したし、剣だってある。
 これから先、どんなふうにビッグワールドとこっちの世界が関わりあって行くかは、判らない以上、忙しいんだ!
 余計なことを考えず。
 向こうの用事を早く終わらせて、僕を手伝え!」

 ふん、と星羅は息を吐く。

「そして、僕と真衣はラブラブなんだからな!
 もちろん、時期も体調も考慮に入れてだけど、子どもはたくさん作る予定だ。
 そしたら、生まれて来た子ら全員。
 君のことを『お爺ちゃん』て呼ばせてやるから、覚悟しておけ!」