その言葉が頼もしく。
強く抱きしめる腕が暖かった。
『「嬉しい」』
きゅん、と震えるココロが。
わたし自身と、わたしのココロの中にいるもう一人と重なった。
『ゼギアスフェルは、いつだって、そう。
妾(わらわ)を守ってくれるのじゃ』
多分、コレ……昔、覇王、って呼ばれたコの意識だ……
『わたし』……『内藤真衣』のココロに混じり込むように、押さえつけるように。
とても強いココロが割り込んでくる。
それは、まるで。嵐の中の風ように、激しく。
水のように、冷たく澄んだ、ココロだった。
『妾はグラウェの薄い外で、生きては、ゆけぬ。
妾の世界は、いつだって寝屋(ねや)の中にしか無くて。
物心ついた時から、毎夜ずっと。
独り寝などしたことないほど誰かに愛されていたのじゃ。
気持ちの良いことなど、少ししかなく。
後は、たいてい怖くて、痛くて、疲れて……恥ずかしいだけで。
どんなに泣き叫んでも、誰も助けなど来ず。
妾の命を狙うモノさえ多かったのじゃ。
……なのに』
『生きる』意味さえ判らず。
『幸せ』を感じたこともなく。
他人を『愛』に狂わせておきながら、自分自身は『愛』を知らずに。
ただ、ただ寝屋(ここ)が地獄だとも知らぬまま。
覇王と呼ばれた少女は、闇の中を這いずっていた。
……ゼギアスフェルに会うまでは。
『初めて出会った、ゼギアスフェルは、まるで、蒼く輝く月光のようだったよ』
そう言って、覇王はわたしのココロの内で、明るく笑う。
本当は、覇王を狙う暗殺者だったのに。
この世に何も切れぬモノはなく、望まぬ運命(さだめ)でさえも斬ってみせると豪語する、剣の性(さが)持つ青年は。
覇王の代わりに、その周りに巣くう闇をあっという間に切って捨てると。
覇王を一人の少女に変え、いずれ、忌まわしい寝屋から『外』に連れだしてやると約束してくれたのだ。
陽の光を浴びて、走り回れる草原を。
涼しい風に吹かれ優しい葉ずれの音が響く、林や森を。
そして。
季節ごと、天候ごとに、様々にその形と色を変える、夜の支配者『月』の光を。
そんなモノを少女にやろうと約束した……
強く抱きしめる腕が暖かった。
『「嬉しい」』
きゅん、と震えるココロが。
わたし自身と、わたしのココロの中にいるもう一人と重なった。
『ゼギアスフェルは、いつだって、そう。
妾(わらわ)を守ってくれるのじゃ』
多分、コレ……昔、覇王、って呼ばれたコの意識だ……
『わたし』……『内藤真衣』のココロに混じり込むように、押さえつけるように。
とても強いココロが割り込んでくる。
それは、まるで。嵐の中の風ように、激しく。
水のように、冷たく澄んだ、ココロだった。
『妾はグラウェの薄い外で、生きては、ゆけぬ。
妾の世界は、いつだって寝屋(ねや)の中にしか無くて。
物心ついた時から、毎夜ずっと。
独り寝などしたことないほど誰かに愛されていたのじゃ。
気持ちの良いことなど、少ししかなく。
後は、たいてい怖くて、痛くて、疲れて……恥ずかしいだけで。
どんなに泣き叫んでも、誰も助けなど来ず。
妾の命を狙うモノさえ多かったのじゃ。
……なのに』
『生きる』意味さえ判らず。
『幸せ』を感じたこともなく。
他人を『愛』に狂わせておきながら、自分自身は『愛』を知らずに。
ただ、ただ寝屋(ここ)が地獄だとも知らぬまま。
覇王と呼ばれた少女は、闇の中を這いずっていた。
……ゼギアスフェルに会うまでは。
『初めて出会った、ゼギアスフェルは、まるで、蒼く輝く月光のようだったよ』
そう言って、覇王はわたしのココロの内で、明るく笑う。
本当は、覇王を狙う暗殺者だったのに。
この世に何も切れぬモノはなく、望まぬ運命(さだめ)でさえも斬ってみせると豪語する、剣の性(さが)持つ青年は。
覇王の代わりに、その周りに巣くう闇をあっという間に切って捨てると。
覇王を一人の少女に変え、いずれ、忌まわしい寝屋から『外』に連れだしてやると約束してくれたのだ。
陽の光を浴びて、走り回れる草原を。
涼しい風に吹かれ優しい葉ずれの音が響く、林や森を。
そして。
季節ごと、天候ごとに、様々にその形と色を変える、夜の支配者『月』の光を。
そんなモノを少女にやろうと約束した……



