そして次の日の、朝。

 わたしは、閉じ込められた白薔薇宮殿の北塔のてっぺんで、春のお祭りに沸くフェアリーランドの様子をぼんやりと眺めてた。

 今日のフェアリーランドも大入り満員だった。

 大声を出せばなんとか、地面の上を楽しげに歩くお客さんに声は届くみたいだったけど。

 今のわたしは、金の髪に、琥珀色の瞳をしているんだ。

 そして、星羅の作った『白薔薇姫』のコスチュームを着たこの姿じゃあ、ねぇ。

 昨日は、ここに連れ戻されたあと。

 いくら『助けて!』って叫んでも無駄だった。

 だって『わぁ、すごーい、本物の白薔薇姫が手を振ってる』なんてにこやかに手を振り替えされるばかりで、緊迫した状況がちっとも伝わらないんだもん。

 そして、本気で逃げれば、美有希とハンドさんが危なかった。

 お父さんは、0と一緒に行方不明のままだったし。

 わたしをここまで連れてきてくれた、デッキブラシ君や、砂糖壷さんがどこにいるのかも心配だった。

 だから、仕方なく、わたしはたった一人で窓辺に頬杖をついて空を見上げてたんだ。

 そして、今日もまた。

 最新の映像革命3Dプラス1だか、本物のビッグワールドの魔法だか、わからない。

 雲ひとつない、快晴の空から、ふわふわと風に漂うようにゆっくりと。

 信じられないほどキレイなピンク色の花が沢山、咲いては、落ちてゆく様子をベッドの上から眺めていた。



 この花は……きっとヴェリネルラ。

 こんな風に最悪な気分で、一人ぼっちで見る花じゃないのに、ね。